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同一労働同一賃金が企業に与える影響について

2024.08.16 コラム事務所通信

はじめに

同一労働同一賃金は、近年の日本における労働政策の重要な柱となっています。この政策は、正社員と非正規雇用者との間の待遇差を是正し、公平な労働条件を提供することを目的とするもので、特に、2019年に改正された「パートタイム・有期雇用労働法」では、企業に対して非正規労働者と正社員との間で不合理な待遇差をなくすよう義務付けました。この政策の背景には、労働市場の変化と、非正規雇用者の増加による社会的な課題がありました。

同一労働同一賃金の背景

日本の労働市場は、バブル経済崩壊後の1990年代以降、長期間の低成長と企業のコスト削減の影響を受けて、正社員ではなくパートタイムや有期契約労働者、派遣労働者といった非正規雇用者が急増しました。2010年代には、全労働者のうち非正規雇用者が約40%を占める状況にまで達し、彼らの多くが低賃金・不安定な雇用条件に置かれ正規雇用との待遇格差が拡大していきました。

このような状況は、経済格差の拡大や労働者のモチベーション低下、さらには消費活動の低迷など、経済全体に悪影響を及ぼすようになってきています。これに対して、政府は「働き方改革」の一環として、非正規労働者の待遇改善を図るための政策を推進しており、その中心となったのが「同一労働同一賃金」の原則でした。

改正パートタイム・有期雇用労働法の施行

2019年に改正された「パートタイム・有期雇用労働法」は、非正規労働者に対する待遇差がある場合、企業に対し、その合理的な理由の説明を義務化しています。

具体的には、基本給や賞与、手当、福利厚生などの各種待遇について、正社員と非正規労働者との間で不合理な差がないかを確認し、その差がある場合には合理的な説明をするよう求められます。この法律の施行により、多くの企業は非正規労働者の待遇見直しを迫られることになりました。

政府の方針と労働基準監督署の役割

厚生労働省は、地方労働行政運営方針の中で同一労働同一賃金の遵守徹底を明確に打ち出しています。この方針に基づき、労働基準監督署は定期的に企業の労働条件を監査し、パートタイム労働者や有期契約労働者の待遇を確認することになっています。不合理な待遇差が認められた場合には、企業に対して是正指導が行われ、改善が求められます。また、労働基準監督署は相談窓口としての役割も果たしており、労働者からの相談に応じて問題を解決する体制が整えられています。

実際に昨年、懇意にしている税理士事務所からの依頼で、関与先の医療機関で未払賃金問題に関する労働基準監督署対応を任された際、担当する同署副署長との面談交渉過程において、「働き方改革の是正指導期間は終わった。令和6年度からは、同一労働同一賃金の監督指導を強化していく政府の方針に従い、我々も動いていく方向だ。」と述べていたのは印象的でした。

企業に求められる対応

企業は、同一労働同一賃金の原則に基づき、自社の雇用形態に応じた待遇の見直しを行うことが求められます。具体的には、以下の手順で確認作業を進めることになります。

パートタイマー・有期雇用労働者の存在確認

まず、自社にパートタイム労働者や有期契約労働者がいるかどうかを確認します。

待遇の差異確認

次に、正社員と非正規労働者の間で待遇に違いがあるかを確認します。この際、賃金や手当、賞与、福利厚生など、すべての待遇が対象となります。

待遇差の合理性の確認

最後に、待遇の違いが働き方や役割の違いに基づくものであり、合理的なものであるかを確認します。合理的に説明できればOKですが、もし合理的な理由が説明できない場合、その待遇差は不合理であると判断される可能性があります。

 

同一労働同一賃金が企業に与える影響

同一労働同一賃金政策の導入は、企業に対していくつかの重要な影響を及ぼしていくでしょう。まず、企業は待遇差の合理性を説明できるよう、雇用形態や職務内容をより明確に定義する必要があります。これにより、企業は人事制度の透明性を高め、従業員の納得感を向上させる必要性に迫られるでしょう。

また、この政策の遵守には、企業が非正規労働者の賃金や待遇を引き上げる必要がある場合があり、その結果として人件費コストが増加する可能性があります。特に中小企業にとっては、このコスト負担が大きな課題となるでしょう。

政府はこうした企業を支援するために、キャリアアップ助成金などの制度を設けていますが、あくまで効果は限定的で、増加した人件費を賄うための経営戦略の練り直しも必要となることでしょう。

同一労働同一賃金政策はまた、企業の労働力確保にも影響を与えます。非正規労働者に対する待遇改善が図られることで、労働者のモチベーションや定着率が向上し、人材確保が容易になる可能性があります。しかし一方、改善した待遇の企業間格差が埋まらず、体力のない中小企業は労働力人口の減少と相まって、依然として労働力確保に汲々とする日々を過ごすことも考えられます。

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まとめ

同一労働同一賃金政策は、日本の労働市場の不合理な待遇差を是正し、労働者に公平な労働条件を提供するための重要な政策です。先述の通り、政府は、この政策を徹底するために、労働基準監督署を通じて企業への監査や指導を強化していく方針です。企業にとっては、この政策に対応するための具体的な取り組みが求められますが、その過程で生じるコストや制度変更については助成金も用意されていますが、効果は限定的かと思われます。今後は、この政策の効果と企業への影響を注視しながら、自社の経営体力の強化を図っていく必要がありそうです。

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